(43)「理性の眠りは怪物を生む」

- 資料番号
- 1701
- 作者
- フランシスコ・デ・ゴヤ
- 年代
- 1798年
- 大分類
- 収蔵品
『ロス・カプリチョス(気まぐれ)』は、1799年に出版されたゴヤ最初の連作銅版画集である。80点の版画の内容は極めて風刺的で、扱うテーマは教会の堕落、民衆の無知、恋愛や結婚、売春、魔女の世界など多岐に渡る。しかしゴヤの意図は個々の人物や事象ではなく人間の本質そのものへの風刺にあり、時代や国を超えた「普遍的言語」の確立にあった。
「理性の眠りは怪物を生む」は連作全体の精神を象徴する場面と言える。男が机に突っ伏して眠り、背後には山猫やこうもり、ミミズクなどの動物たちが姿を表している。タイトルに従えば、男が眠ると登場する夜の動物たちは、忌まわしき旧来の制度や迷信諸悪の象徴であり、理性こそがそれらを制御し払拭すべきだという、啓蒙主義的なメッセージを読み取ることが出来よう。しかし一方で、男の左にいるミミズクが彼にニードルを差し出している点に注目すると、全く異なる解釈の可能性が浮かび上がる。つまり、男はこの版画を刻む芸術家ゴヤであり、芸術家は理性による束縛を逃れてこそ、自由な想像力やファンタジーを飛翔させることができる、と。そしてそうした「奇想と創意」こそが、芸術制作の着想源となるのだとする、極めてロマン主義的、そして近代的な芸術観の表明である。
ゴヤは1799年2月6日に本連作の発売予告の広告を打ったが、何らかの理由で数日で販売を中止し、残った240部をオリジナルの銅版とともに王立銅版画院に寄贈している。しかしながら本連作はゴヤの存命中からスペイン国外においても流布し、ドラクロアをはじめとするフランス・ロマン主義の芸術家たちに多大なる影響を与えた。
当館は、初版の中でも最初期の刷りで、ゴヤ自身のために施された斑模様の革張りの装丁をそのまま保つ、大変貴重なセットを所蔵している。また、スペイン独立戦争(1808-14年)でナポレオン軍を駆逐するに一役買い、ゴヤがその肖像を描いたイギリスのウェリントン卿が旧蔵していたという来歴も、その歴史的価値を高めている。
「理性の眠りは怪物を生む」は連作全体の精神を象徴する場面と言える。男が机に突っ伏して眠り、背後には山猫やこうもり、ミミズクなどの動物たちが姿を表している。タイトルに従えば、男が眠ると登場する夜の動物たちは、忌まわしき旧来の制度や迷信諸悪の象徴であり、理性こそがそれらを制御し払拭すべきだという、啓蒙主義的なメッセージを読み取ることが出来よう。しかし一方で、男の左にいるミミズクが彼にニードルを差し出している点に注目すると、全く異なる解釈の可能性が浮かび上がる。つまり、男はこの版画を刻む芸術家ゴヤであり、芸術家は理性による束縛を逃れてこそ、自由な想像力やファンタジーを飛翔させることができる、と。そしてそうした「奇想と創意」こそが、芸術制作の着想源となるのだとする、極めてロマン主義的、そして近代的な芸術観の表明である。
ゴヤは1799年2月6日に本連作の発売予告の広告を打ったが、何らかの理由で数日で販売を中止し、残った240部をオリジナルの銅版とともに王立銅版画院に寄贈している。しかしながら本連作はゴヤの存命中からスペイン国外においても流布し、ドラクロアをはじめとするフランス・ロマン主義の芸術家たちに多大なる影響を与えた。
当館は、初版の中でも最初期の刷りで、ゴヤ自身のために施された斑模様の革張りの装丁をそのまま保つ、大変貴重なセットを所蔵している。また、スペイン独立戦争(1808-14年)でナポレオン軍を駆逐するに一役買い、ゴヤがその肖像を描いたイギリスのウェリントン卿が旧蔵していたという来歴も、その歴史的価値を高めている。